|
第3回 日本脳炎について
■日本脳炎とワクチン接種■
ご両親からのお問い合わせで最も多いのが子供の予防接種についてです。日本と中国では推奨される予防接種スケジュールがまったく違いますし、ワクチンの安全性などで戸惑われる方も多いと思います。当クリニックでは日本と中国の事情を考慮しつつ、日本の予防接種ベースでスケジュールを組んで行っていますが、そのうち日本では推奨がないものの中国では是非接種をおすすめするワクチンがあります。今回はそのうちの一つ、日本脳炎についてお話させて頂きます。
■日本脳炎とは■
日本脳炎ウィルスは蚊によって感染し、人から人への感染はありません。ウィルスを運ぶ媒体となる蚊に刺されて感染した豚から、やはり蚊を通して人間に感染します。日本脳炎ウイルスに感染しても無症候の場合が多いのですが、発症した場合には昏睡、けいれん、麻痺、異常運動、また重篤な脳炎引き起こし、三分の一が死亡すると言われています。また、そのうち40%の生存者に重篤の後遺症を残します。日本ではつい最近まで予防接種を行ってきましたが、1992年以降の日本脳炎患者数は高齢者を中心に年間10名未満とごく少数の報告例しかなく、1996年から2004年度までの統計ではっきりした関連性は証明されていないものの、日本脳炎ワクチンによるとみられるADEM(急性散在性脳脊髄炎)の患者が13例(うち重症例4例)みられたため、2005年5月付けで日本脳炎ワクチンの3期予防接種が廃止となりました。ですが予防接種の必要性がまったくなくなったのではなく、ワクチン接種と非接種のリスクを比較した結果、国として積極的な推奨を差し控えるという事になったのです。確かに日本では衛生状況の向上、養豚場の減少、エアコンの普及による蚊の減少などで発症者は殆どみられなくなりました。
■中国では■
『日本』脳炎ウィルスという名前ですが、日本だけでなく東南アジアを中心に広く分布しており、年間数万人の患者発生が報告されています。最近もインド北部やネパールで日本脳炎が大流行し、患者数が8000人以上に達したと報じられました。実際、厚生労働省や国立国際医療センターなどでも東南アジアや日本脳炎流行地域(中国も含まれます)に渡航する場合には、義務ではありませんが、日本脳炎ワクチンの予防接種を推奨しています。
上海に住んでいると外国にいる事を忘れてしまいそうですが、まだまだ衛生的には日本のように発展していません。市街地から1時間も車を走らせると広々とした農地が広がっていますし、養豚場から運ばれて来る大量の豚を載せたトラックもよく走っています。日本脳炎ウィルス媒体とされるコガタアカイエカは中国でももちろん生息していますが、イエカ属の蚊はすべて媒体となりますのでなるべく蚊には刺されない事が大事です。といっても、上海で夏を過ごされた方はご存知の通り。日本よりも蚊が多く、刺されないというのが無理な話です。ですので、日本脳炎ワクチン接種での予防を強くお勧めします。
上海の予防接種スケジュールでは子供への日本脳炎ワクチンの接種を義務付けています。ご参考までに、上海疾病予防コントロールセンターの予防接種スケジュール表のページを以下に添付します。 『乙脳疫苗』=『日本脳炎ワクチン』
ワクチンについてですが、当クリニックの場合、厳格な管理下に製造された改良型のイギリス製ワクチンを使用していますので、まず副作用についてはご安心頂けると思います。日本では中止された予防接種でも、異国では環境的な違いも色々とあるため、なるべく現地の予防接種と日本の予防接種を全部考慮したプランを立ててください。またいつでも質問がございましたら当クリニックまでお問い合わせしてください。
参考HP
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/nouen/index.htm
国立国際医療センター http://www.imcj.go.jp/dcc/tokou/tokou-yo-02-3.html
上海疾病予防コントロールセンター http://www.scdc.sh.cn/abc/ymzn.htm
2007年3月14日
GHC(グローバルヘルスケア)クリニック
唐堂愉司 内科・小児科医師
|